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安全保障法案に関連して 

2015.07.15

 

まとめ

集団的自衛権を基礎とする安全保障法案が対象となるのは中国でも北朝鮮でもなく、中東やアフリカにおける対テロ戦争である。日本の置かれる状況は、ベトナム戦争に参戦した韓国と同じであろう。対テロ戦争の場合、自衛隊員が戦闘地域で死傷するばかりでなく、一般の日本人も世界各地でテロの標的になるであろう。さらに、戦闘参加は日本経済にとっても大きな負担になる。

 

中国の場合

中国が尖閣諸島を攻撃し、占領する事態に対処するために、米軍の援助が必要である。そのために、日米安保条約を強化し、その証しとして米軍が攻撃される場合に集団的自衛権に基づいて米軍を日本が援護する体制が必要との説明がなされる。

この場合、尖閣や沖縄が攻撃された場合、米軍が日本を助けるために戦闘するであろうか?


米軍が米国の利益のためでなく、日本の利益のために動くのか?答えは「米軍は動かない」であろう。米国は米国の国益のためには何でもやるが、自国の国益に直結しない事柄に対しては行動を起こさない。

 

中国にとって尖閣は軍事的に必要不可欠なのか?私は不可欠ではないと考える。中国にとって最重要な関心ごとは軍事的、経済的に米国と対等か、米国を凌ぐことである。中国は米国本土を攻撃可能な核ミサイルが米国に対する抑止力になると考える。ただし、射程距離だけでは十分でない。原子力潜水艦が必要であり、原潜が隠密に行動することができる深海が必要。隠密とは探知されないことを指す。

 

中国にとって尖閣の価値は2つあると思う。
@ メンツの問題。日中国交回復の時点で、田中角栄総理と周恩来首相の間で領有権は棚上げされた。その棚上げが野田総理による尖閣の国有化によって反古にされたことに対する反感がある。
A 海底資源の問題。尖閣諸島の周辺の海底には石油などの資源があるらしい。資源が存在するならば経済的な損得の問題が発生し、その利益を日本が独占することを認めることができない。

 

東シナ海は浅いため、潜水艦は簡単に探知されるとのこと。そのため、深い南シナ海から太平洋に出る道を中国は確保したい。フィリピンとベトナムの沖合にある岩礁を埋め立て、そこに軍事基地を建設する目的は、米国本土を攻撃することが可能な原潜を行動させることと考えてよい。

 

集団的自衛権は米軍が攻撃を受けたときに日本が軍事力を行使することを可能にする枠組みである。しかし、米軍が攻撃を受けていなくても中国の原潜の探査に自衛隊が出動する可能性は高い。米軍に手薄な部分があれば自衛隊がその部分を補って欲しいとの要請は出て来るはずであり、その要請を断ることは考えられるない。

 

要するに、中国がいずれ日本を侵略するから、その事態に備えて日米安保を強化し、中国の武力攻撃に対峙する米軍が攻撃される場合に自衛隊が米軍を護ることを可能にしたい。そのために集団的自衛権が必要であると言う論理は非現実である。

 

北朝鮮の場合

中国と同様に、北朝鮮が日本あるいは米軍をミサイル攻撃する事態が想定されている。しかし、現在の技術では敵が発射した弾道ミサイルをミサイルで迎撃する確立は低い。敵が多数のミサイルを同時発射したら、それを完璧に迎撃することは不可能。すなわち、北朝鮮を仮装敵国としてミサイル防衛を展開しても成功率は低い。

 

朝鮮半島の周辺で米軍が北朝鮮から武力攻撃を受けたとしても米国は直ちに報復することはないと思われる。被害が軽微ならば外交チャンネルでの解決を試みるであろう。米国が反撃するのは、米国本土が核ミサイルによって攻撃された場合である。

 

非常識な行動をとる国に対して常識的あるいは理性的な対応することは極めて難しい。

 

対テロの場合

2001年9月11日に米国で発生した同時多発テロ以降、米国は対テロの戦闘を各地で行っている。2001年10月にアフガン戦争が始まり、最近はシリアをはじめとする中東やアフリカの諸国でも戦争を行っている。

 

2015年7月14日にイラン核協議が最終合意に達したことが発表された。しかし、イスラエルはイランの核兵器開発がこの合意によって終焉するとは考えておらず、イスラエル・イランの武力衝突の懸念は残る。こうした事態も対テロの場合に含めて考えてよい。

 

対テロの戦闘は広い地域に拡散しており、米軍としても手が十分に回らない状態である。しかも、米国は財政赤字を削減するために軍事費を大幅に削減中である。その結果として、米国は米軍が削減された部分を日本の自衛隊によって補完されることを願っている。そうした状況にあるときに、日本が集団的自衛権を行使して米軍の手伝いを申し出たので、米国は大歓迎である。

 

集団的自衛権が発揮されるのは、対中国ではなく、対北朝鮮でもなく、中東やアフリカにおける対テロ戦争である。これが本命であるはず。日本の自衛隊は第二米軍として米国が行う戦争に参加するはず。自衛隊員にリスクがあるとかないとかの議論はナンセンスである。武力を行使しない自衛隊を米国が想定するはずがない。リスクはあるに決まっている。

 

つまり、安倍政権が、自衛隊員は戦闘地域に配置されません、安全ですと説明することは全くの嘘もしくは現実を理解できていないかのいずれかである。

 

さらに、米国が財政赤字を健全化することとは反対に日本は財政赤字を悪化させることになる。戦闘に参加すれば装備や自衛隊員の人件費に予算が消費される。日本は人命に加えて財政赤字も負担することになる。

 

対テロの戦争に日本が陽に参加すれば、日本人が世界各地でテロの標的になる。

 

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